Bento/Slidesは、プレゼン資料と編集アプリを1つのHTMLファイルにまとめるオープンソースのスライド作成環境です。インストールやアカウントを必須にせず、.bento.htmlをブラウザで開くだけで閲覧・編集・発表まで行えます。さらに文書データがJSONとして保持されるため、CodexやClaude Codeなどファイルを編集できるAIエージェントとの相性も特徴です。
2026年8月14日に、公式サイトとブラウザ版エディターをChromiumで開いて表示を確認しました。以下の画面は、いずれもBento公式ページまたは公式公開デモを同日に撮影したものです。
公式画面ギャラリー

Bento公式サイト(2026年8月14日撮影)。アカウント不要でブラウザから試せる導線と、約670KBの単一ファイルとして配布されることを確認できます。

公式公開デモの編集画面。左のサムネイル、中央のキャンバス、右のプロパティ、上部の挿入・共有・保存操作が1画面にまとまっています。

公式サイトの文書形式と編集方法の説明。application/bento+jsonの文書ブロックを境界として扱う構成を確認できます。

公式テンプレートギャラリー。Signal、Terra、Orbital、Pixel Picnicの4種類が公開され、各テンプレートをブラウザで開くか単一ファイルとして取得できます。
掲載した4枚は公式サイトと公式公開デモの画面を製品解説のために撮影したものです。Bento本体はMIT Licenseで公開され、公式READMEではギャラリーに使われる写真素材もパブリックドメインとして出典管理されています。
Bento/Slidesとは
Bento/Slidesが一般的なプレゼンアプリと大きく違うのは、資料ファイルの中にビューアー、プレゼンター、エディターまで含める設計です。
配布されるBento_Slides.bento.htmlは、モダンブラウザからそのまま開けます。ファイルサイズはリリースによって変わり、2026年8月14日の公式サイトでは約670KBと案内されていました。編集後はFile System Access APIを利用して自身の文書データを書き換え、利用できない環境ではダウンロードへフォールバックします。
資料の本文だけを保存する形式ではないため、受け取った側にBento専用アプリを別途インストールしてもらう必要がありません。ファイルそのものが表示・編集環境を持つ構成です。
AIエージェントから直接編集しやすい
Bento/Slidesでは、スライドの文書モデルがファイル内の読み取り可能なJSONとして保持されます。
そのため、Claude Code、Cursor、Aiderなどファイルシステムへアクセスできるエージェントは、.bento.html内の文書データを直接変更できます。専用APIや外部プラグインを必須にしない点は、AIからスライドを自動生成・修正したい用途で扱いやすい部分です。
チャット型AI向けには、文書JSONをコピーしてAIへ渡し、編集されたJSONを戻す方法も用意されています。ローカルモデルを使う場合はOllama、llama.cpp、LM Studioなどと組み合わせ、資料内容を外部サービスへ送らずに作業する構成も可能です。
ただし、AIがHTML全体を無秩序に書き換える運用は避けた方が安全です。Bentoには文書モデルの仕様とエージェント向けガイドが用意されているため、自動編集ではその構造を守る必要があります。
ローカルファーストとオフライン動作
Bento/Slidesはローカルファーストを前面に出しています。
Offline modeを有効にすると、更新確認や共同編集を含む通信を停止する設計です。資料作成そのものにクラウドアカウントを必要としないため、ネットワークから切り離して扱いたい資料にも適しています。
一方で、クラウドサービス型のGoogle Slidesのように「どの端末からでもログインすれば同じ資料が出てくる」という管理方法ではありません。基本単位はファイルなので、バックアップや最新版の所在は利用者側で管理する必要があります。
E2EEの共同編集
オンライン共同編集も用意されています。
公式READMEによると、共同編集ではAES-GCMによるエンドツーエンド暗号化を使い、鍵は文書ファイル側に保持されます。同期用リレーは暗号文を扱い、文書本文や構造を読み取らないことを前提とした設計です。
共同編集には独自CRDTが使われ、オフライン中の編集を後から統合する仕組みも含まれています。
ただし、共同編集の鍵がファイルに含まれるため、ファイルを持っていること自体が共同編集ルームへの参加資格に近い扱いになります。企業向けサービスで一般的なユーザーアカウント単位の細かな認証・権限管理とは考え方が異なります。
公式ドキュメントでも、presence上の名前は本人確認されたIDではなく、企業向けの強いID管理には追加の仕組みが必要としています。
v1.0.17以降を使いたい理由
2026年8月14日時点の最新版は、8月10日に公開されたv1.0.17です。このリリースには、他人から受け取ったデッキを開く場合に関係する重要なセキュリティ修正が含まれています。
- 画像、図形、埋め込み描画などの文書内容からスクリプトが動く経路を、表示・サムネイル・PDF出力で無害化
- 「Copy document JSON」で書き出すデータから、共同編集ルームの秘密鍵を除外
- パスワード保護されたデッキをテンプレート保存すると内容が平文で出る問題を修正
- 共同編集の秘密情報を含むファイルをエージェントへ渡す前に警告し、
window.bento.validate()でも検出できるように変更
すでに共同編集中のファイルやJSONを外部へ渡していた場合、アップデートだけでは過去に共有した鍵を無効化できません。公式リリースノートでは、Shareから鍵をローテーションして新しいコピーを共有し直す手順が案内されています。
単一HTMLは便利ですが、通常の受動的な文書より実行環境に近いファイルです。出所の分からない古い.bento.htmlをそのまま開かず、最新版へ更新したうえで扱うのが安全です。
プレゼン機能も単一ファイル内に入る
Bento/Slidesは単純なHTMLスライド変換ツールではありません。
同じIDを持つ要素をスライド間でアニメーションさせるMorph、スピーカービュー、コメント、チャート、モーションパス、PDF出力などを備えています。チャート描画やアニメーションの一部も独自実装です。
この記事の初回確認時点だった2026年7月24日のv1.0.8では、OSのprefers-reduced-motionに連動するプレゼン時のモーション低減、グラデーション文字、アウトライン文字、ブラーとブレンドモード、フロストガラス風表現などが追加されました。
同時に共同編集時のフォーカス消失、負数を含むチャート、Mobile Safariでのピンチ操作なども修正されています。
PowerPoint・Google Slidesとの違い
PowerPointはOfficeとの連携、テンプレート資産、企業環境での互換性が強みです。Bento/Slidesは機能数で正面から置き換えるというより、「資料と実行環境を単一ファイルにまとめる」「データ構造を外部ツールから編集しやすくする」という方向へ振っています。
Google SlidesはURL共有、Googleアカウント、クラウド共同編集を中心に設計されています。Bento/Slidesではファイルが中心で、アカウントを作らずローカルで完結できる一方、組織のユーザー管理やクラウド側での履歴・権限制御ではGoogle Slidesの方が扱いやすい場面があります。
注意したい制限
公式READMEでは、共同編集時のundoがスナップショットベースで、同じプロパティを別の参加者が同時編集した場合、その変更を巻き戻す可能性があると説明されています。
また編集UIはdesktop-firstです。スマートフォンでは閲覧・発表を想定しつつ、本格的な編集はPC向けと考えた方がよいでしょう。
さらに、一般的な.pptxを中心とした既存業務フローとは異なります。社内標準フォーマットや外部取引先との互換性が必要な場合は事前確認が必要です。
単一ファイル形式が合うケース
- CodexやClaude Codeなどからプレゼン資料を生成・修正したい
- クラウドアカウントなしで資料を保持したい
- 1ファイルだけ渡せば表示・発表できる形式が欲しい
- JSONベースの文書モデルをGitで管理したい
- オフラインやローカルLLMを組み合わせたい
逆に、Microsoft Officeとの高い互換性、企業IDによる厳格なアクセス制御、既存のGoogle Workspace運用との統合を最優先する場合は、既存製品をそのまま使う方が運用負荷は小さくなります。
今回の結論
Bento/Slidesは「PowerPointの無料代替」という一言では捉えにくいプロジェクトです。単一HTML、ローカルファースト、JSON文書モデルという3つの設計がつながり、AIエージェントから編集しやすいスライド環境になっています。
一方、共同編集の認証モデルやOffice互換性などは既存の企業向けプレゼン基盤と同じではありません。まず個人資料やAIによるスライド生成から試し、自分の運用に単一ファイル形式が合うかを見るのが現実的です。
試す場合は公式サイトの公開デモから始め、v1.0.17以降のファイルを使います。共同編集の鍵が入ったデッキをチャットや外部ツールへ渡す前には、共有状態とwindow.bento.validate()の結果を確認しておくと安心です。
参照情報
- GitHub: https://github.com/nyblnet/bento
- Bento公式サイト: https://bento.page/
- ブラウザ版エディター: https://bento.page/slides/
- AIエージェント向けガイド: https://bento.page/agents.md
- v1.0.17リリースノート: https://github.com/nyblnet/bento/releases/tag/v1.0.17
- Changelog: https://github.com/nyblnet/bento/blob/main/CHANGELOG.md